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2025年スタートの「省エネ基準適合義務化」とは?
家づくりや住宅ローンはどう変わる?
2022年6月交付の「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」の改正にともない、2025年4月から、全ての新築住宅に省エネ基準の適合が義務づけられます。そもそも省エネ基準とはどのような基準なのか、これからマイホームを検討している方にどのような影響があるのかをまとめました。
建築物省エネ法改正の背景は?
日本のエネルギー消費量の約3割は建築物から!
地球温暖化対策として、わが国では「2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)」という目標を掲げています。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスが実質ゼロになった状態。そのためには、「温室効果ガスの排出を抑える」「温室効果ガスを吸収・除去する」という両面からのアプローチが必要になります。
温室効果ガスの排出を抑えるために、エネルギー消費量全体の約3割、さらに吸収源強化をはかるうえでも、木材需要の約4割を占める建築物分野における取り組みが急務とされているのです。
改正建築物省エネ法で主に変更されたのが次の7点。このうち、これから家を建てる方に特に関係があるのが「③省エネ基準適合義務の対象拡大」で、2025年4月からはすべての新築住宅に省エネ適合義務が課せられることになりました。
① 建築主の性能向上努力義務
② 建築士の説明努力義務
③ 省エネ基準適合義務の対象拡大
④ 適合性判定の手続き・審査
⑤ 住宅トップランナー制度の拡充
⑥ エネルギー消費性能の表示制度
⑦ 建築物再生可能エネルギー利用促進区域
住宅の省エネ基準とは?
「一次エネルギー消費量基準」と「外皮基準」から構成
それでは、「省エネ基準」とは具体的にどのような性能を指すのでしょうか。建物の省エネルギー性は設備と構造によって確保されますが、それぞれに「一次エネルギー消費量基準」と「外皮基準」が設けられています。
「一次エネルギー消費量基準」とは住まいのエネルギーをいかに効率よく使えるかを示した性能基準。BEIという単位で表され、省エネ基準はBEI≦1.0と定められています。これを下げるには、高効率のエアコンや給湯器、LED照明などを採用してエネルギーを上手に使う工夫が必要となります。
「外皮基準」は住宅のみに適用される、屋根や外壁、窓などの断熱性能に関する基準です。いかに外からの熱や冷気の影響を受けにくく、冷暖房効率の高い建物であるかを示しています。
住宅の外皮性能は「建物からの熱の逃げやすさ」を示すUA値と「建物への日射熱の入りやすさ」を示すηAC(イータエーシー)値で構成され、どちらも全国8つの地域別に基準値が定められています。たとえば東京都は6地域に指定されているため、UA値が0.87W/㎡K以下であることが省エネ基準となります。
外皮平均熱貫流率(UA(ユー・エー))
- 室内と外気の熱の出入りのしやすさの指標
- 建物内外温度差を1度としたときに、建物内部から外界へ逃げる単位時間あたりの熱量※を、外皮面積で除したもの。
- 値が小さいほど熱が出入りしにくく、断熱性能が高い
冷房期の平均日射熱取得率(ηAC(イータ・エー・シー))
- 太陽日射の室内への入りやすさの指標
- 単位日射強度当たりの日射により建物内部で取得する熱量を冷房期間で平均し、外皮面積で除したもの。
- 値が小さいほど日射が入りにくく、遮蔽性能が高い
建物の断熱性を表す時によく使われる「断熱等級」に当てはめると、省エネ基準は「断熱等級4」に相当します。
もし基準に適合していないとどうなる?
着工できないし、住宅ローン減税が受けられない!
これまでは一般的な住宅については省エネ基準の適合が義務付けられていませんでしたが、2025年4月以降に建築確認申請をする全ての建物について、適合義務が課せられることになりました。
省エネ基準に適合しているかどうかは建築確認手続きの中で審査されるため、基準を満たしていない場合は工事に着手することができません。
さらに、2024(令和6)年度税制改正において、住宅ローン減税の適用基準が変わりました。住宅ローン減税とは正式名称を「住宅借入金等特別控除」といい、ローンで自宅を購入した人が利用できる税制優遇。最大13年間、年末時点の住宅ローン残高の0.7%が翌年の所得税と住民税から控除されます。
この住宅ローン減税の適用条件に、2024年度から省エネ基準適合が加わりました。さらに、省エネ基準以上の性能を持つZEH住宅や低炭素住宅については借入限度額がより高く定められています。
省エネ住宅のメリットと資産価値
2030年には「ZEH(ゼッチ)基準」が義務化される?
2025年4月以降は実質、省エネ基準に適合していない住宅は新築で建てられなくなります。省エネ性能の向上は建築費のアップにもつながりますが、省エネ住宅にはメリットも多くあります。
まず、住宅の断熱化によってヒートショックの心配がなくなるだけでなく、住む人の健康やQOL(生活の質)に良い影響がもたらされます。
国交省の資料でも、室温18℃以上の住宅に住む人に比べると、室温が12~18℃の住宅に住む人は心電図の異常所見のある人が1.8倍、12℃未満で2.2倍に増えることが示されています。総コレステロール値が基準範囲を超える人もそれぞれ1.8倍、1.9倍に増えています。
将来にわたり資産価値を保つ住まいを建てるために、省エネ性能は避けて通れない要素。とはいえ現在はまだまだ普及段階ということもあり、助成制度などが手厚いのは嬉しいポイントです。国や自治体の助成金は毎年要件などが変わるため、もし気になったらいつでもご質問ください。
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