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住まいを仕切る、だけじゃない!
光と風・視線をコントロールする「建具」

住まいにおいて、壁や床などと同様に重要な役割を果たす「建具」。ドアや窓など、空間を仕切るものの総称ですが、この建具にはいくつかの機能と種類があります。ひとつの家にはいくつもの建具があるため、住まいづくりではそれらを一つひとつ選ばなければいけません。今回は、建具の種類とそれぞれのメリット・デメリット、場所に応じた建具の選び方を解説します。

建具とは?
役割で大きく分けると「外部建具」と「内部建具」の2つ

建具の歴史は古く、日本に現存する最古の建具は法隆寺金堂のもの。すでに弥生時代の竪穴式住居で入口に簡易な建具が用いられていたとされています。人がつくる住まいの歴史とともに、建具も進化してきました。

現代の住まいの建具は大きく、外と内を隔てる「外部建具」と、屋内で空間を仕切る「内部建具」に分けられます。「外部建具」の代表は玄関ドア。ほかに窓や網戸、雨戸なども外部建具です。外部建具の役割は家の出入りと防犯、外からの通風と採光です。外の眺望を室内にもたらす一方で、外からの視線を遮断する役割もあります。

「内部建具」は室内ドアと収納の扉、和室ではふすま戸や障子などで、空間を仕切るのが主な役割です。また、窓のない場所に光と風を届ける役割をもつこともあります。

最もよく使われる「開き戸」
シンプルでコストが抑えられる

建具の開き方で分けてみましょう。「ドア」といえば真っ先に思い浮かぶ、押したり引いたりして開くタイプの建具が「開き戸」です。一枚の建具で構成されたものを片開き戸、2枚の扉がついたものを両開き戸といいます。両開き戸は「観音開き」とも呼ばれ、左右で扉の大きさが違う開き戸を「親子ドア」と呼びます。

開き戸のメリットには気密性が高いこと、床面をフラットに仕上げられること、種類が豊富で比較的コストが抑えられることが挙げられます。玄関ドアにも開き戸が最も多く採用されています。

一方で、扉を開くスペースが必要となるため、ドアの可動域には家具などを置くことができません。また、風で勢いよく閉まってバタンと大きな音が鳴ったり、扉の向こうに人がいることに気付かずに開けた時にぶつかってしまうなどのリスクもあります。

高齢者のためのリノベーションでも
よく採用される「引き戸」

引き戸は、横方向にスライドするタイプの建具で、開口部を広くしやすいため高齢の方や車いすの方も使いやすいのが特徴です。また、リビングなどに設置し開け放したときは大空間、来客時や就寝時は個室にするなど、フレキシブルな空間の使い分けにも向いています。

引き戸には、床の溝(レール)の上をスライドさせるものと、上部にレールのある「吊り戸」があります。片側に開閉する「片引き戸」、2本のレールに2枚の扉のついた「引き違い戸」、1本のレールに2枚の扉の「引分け戸」などの種類も。壁の内部の戸袋に扉部分を収納し、全て開放すると扉が見えなくなる「引き込み戸」もあります。

引き戸は見た目もすっきりして、扉前後のスペースの有効活用が可能です。また、開き戸よりも簡単に開閉できること、開閉の具合で通風などを調節できることもメリットです。

しかし開き戸と比べると密閉性・遮音性ではやや劣ります。また、省スペースといっても左右どちらかに扉を引き込むスペースが必要なため、設置場所がやや限られるのもデメリットといえるでしょう。

扉を折りたたんで開く「折れ戸」はクローゼットの入り口などに多い

扉をスライドさせつつ、折りたたんで開くのが「折れ戸」です。折れ戸は、引き戸のように開口部を大きく設けることができ、開き戸ほどの開放スペースは必要としないのが特徴。そのためクローゼットやバスルームの入り口にもよく見られます。

折れ戸のメリットは、デッドスペースが少なく、狭い場所でも大きく開口できることです。また、吊り戸にすれば床面をフラットにすることも可能です。

ただし、開き戸ほどではなくても、たたんだ扉の分のスペースが前後に必要です。さらに開き戸や引き戸よりもつくりが複雑なため、やや開けるのにコツがいることや、指を挟むリスクが高くなる点、蝶番(ちょうつがい=扉を連結させる金物のこと)が多いぶんメンテナンスが複雑になりがちなことがデメリットです。

場所に応じた建具を選べば仕切る以外のこんな役割も

空間同士を仕切るのが建具の主な目的ですが、用いる場所や建具のつくりによっていくつかの役割をもたせることができます。

たとえば、引き戸の項で触れたような、空間を用途に合わせて使い分けたい場合。建具で仕切ることで、リビングの一部を寝室や客間・ワークスペースなど、用途に合わせた個室にすることができます。引き戸で、さらに天井までのハイドアにすれば、開け放したときの空間の一体感もそこなわれません。

さらに、暗い部屋や収納内部・水まわりなどにも、建具にガラスやアクリルなどの透明な素材を用いることで、光を導くことができます。透明な素材、といっても建具の一部だけを透明にして光の通り方を調節したり、すりガラスや模様ガラスのような半透明の素材を選べば、光は通すもののはっきりとは見えない、というふうにも。

和室の障子も光を通し、視線は通さない建具のひとつです。道路に面した和室などは、目線の高さは隠しつつ、風は通し外の様子が分かる雪見障子の採用がオススメです。

仕切りたいが通風は欲しい、という場合は壁に開閉できる室内窓を設置するという方法もあります。ほかに、閉めてもペットだけが通れるペットドアなど、求める機能に応じてさまざまな建具があります。

建具は建材メーカー各社がたくさんの商品を出しており、さらに枠やハンドル、ドアノブと組み合わせると膨大なバリエーションになります。もし実物が気になったら、ショールームなどで確認してみましょう。

また、空間に合わせてセミオーダーしたり、造作することも可能。既製品よりコストは上がりますが、リビングドアなど目立つ部分だけこだわって他の場所は抑えるなど、予算にメリハリをつけるのもひとつの方法です。

Point!

家づくりにおいて建具選びは選択肢も多く、迷いがちなもののひとつ。ケーナインでは、建築士資格を持つインテリアコーディネーターが、お客様の好みを把握したうえで、機能面・デザイン面でふさわしいものをご提案させていただきます。お客様が家づくりを楽しめるよう、プロとして寄り添います。