家づくりの
コツ・アイディア

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【建築士インタビュー】後編
お客さまと寄り添い続けた
設計士としての歩みとこれから

設計部門の責任者であり、ケーナインの建築のほぼ全てに携わる高橋に、これまでの経歴や住まいに対する想いを語ってもらうこちらのコラム。前編では設計士になった理由や仕事上のこだわり、これまで手がけた仕事について聞きました。後編ではさらに設計事例を紹介するとともに、今後の展望もお伝えします。

旧宅の茶室を忠実に再現した
親子の絆を深める二世帯住宅

「住む人の数だけ暮らしがあり、住まいへのこだわりがある」。当たり前のことのように思えますが、いざそれを家づくりに反映しようとすると難しいもの。特に二世帯住宅では、世帯ごとのこだわりや心地の良い距離感をしっかり把握し、設計に落とし込む必要があります。

他県に暮らすお母さまを呼び寄せて同居する家を建てたい、とご相談にいらしたDさま。その建築計画も、親世帯と子世帯それぞれの要望を整理し、優先順位を共有するところからスタートしました。

「50年以上も茶道をたしなんでこられたお母さまが最も重視したのが、1階の茶室。すでに動線が確立されている旧宅の茶室に、できる限り近づけてほしいとのことでした」(高橋、以下同)。

そこで現場監督とともに千葉のご実家に伺い、細かく計測したうえで水屋や床柱などを再現。住宅全体の工事とは別に、茶室の施工経験をもつ大工を手配し、細かい造作にも対応しています。以前の茶室では叶わなかった「茶室の雪見障子から庭を眺めたい」というご希望に合わせて、庭の植栽にもこだわりました。

「2階はDさまご夫妻のための住空間で、南向きの明るいリビングを中心にした暮らしをイメージされていました。そこで、吹き抜けを設けて縦にも広がりのある設計に。水回りは1階の親世帯と2階の子世帯で同じ位置に配置し、お互いの生活音が気にならないようにゾーニングしています」

玄関や水まわりをそれぞれにつくった完全分離型二世帯ですが、扉1枚でつなげて室内からの行き来も可能に。新しい茶室で母娘のお稽古も再開されたそうです。

「ご夫婦、ご両親ともに購入された土地での新たな生活のスタート。この家で笑顔あふれるコミュニケーションが多く生まれてほしいと願っています」と締めくくりました。

プロジェクトチームでつくり上げた
オーナーの理想と美意識が宿る賃貸住宅

続いてご紹介するのは、不動産コンサルタントからの紹介という少し変わった経緯の収益物件。

「鎌倉に2年かけて探した、とっておきの土地に賃貸アパートを建てたい。それも絶対に普通の建物じゃイヤだ!とオーナーであるTさんに言われていたので『これは高橋さんじゃないとムリだな』と思ったんです」と、当時を振り返るコンサルタントのK氏。

TさまとK氏、地元の賃貸動向に詳しい仲介会社のM氏と高橋、この4人による建築プロジェクトがスタートしました。

「最初に、Tさまから実現したいイメージの共有として写真を送っていただいたのですが、それが300枚ほど。『他とは違うコンセプトで、オンリーワンの建物を建てたい』という思いが強く伝わってきたのを覚えています」

Tさまの理想とするイメージは、『高級ゴルフクラブやリゾートホテルのような、自然とデザインが美しく融合した空間』。そこに建築の観点、ニーズも含めた収益性の観点などあらゆる方向から意見を出し合い、間取りや仕様を決めていきました。

「建築士として、出てきたアイデアが物理的に成り立つのかと常に考えながら打ち合わせにのぞみました。それぞれの分野のプロがリスクやコストについても率直に意見を言い合って、Tさまの掲げるゴールに向かって一緒に走っているという感覚がありましたね」

高橋が提案したのは、三方角地の特徴を生かして、中廊下で全部屋が外に開口したプラン。スキップフロアやロフト、屋上付きの住戸など各戸に付加価値を設けて、土地のポテンシャルを最大限生かした建物に仕上げました。

玄関からフルオープンでつながる土間、洗面への直接のアプローチなどスペースを合理的に使いつつも、㎡数以上の広がりを感じさせる間取りに、内見に来た人はみな「こんなに広いと思わなかった」と驚きます。

「設計以外にも、鎌倉ならではの法規制の複雑さや埋蔵文化財の可能性、近隣住民への説明など、慎重に進めるべき問題が多くありました。そのため、鎌倉市役所には何度も通いましたね。最終的にはすっかり職員の方とも打ち解けて、近隣の方へのご挨拶にも何度か同行してくれたほど」

完成後、エリア相場より2~3万円高い家賃設定でも入居者が決まっているとのこと。狙い通り、平日は都心や近郊で働き、週末はサーフィンなどをアクティブに楽しむ方々に選ばれ、愛される物件となりました。

建築士として、ケーナインの一員として
これから取り組んでいきたいこと

多くの建築設計に関わり、お客様の笑顔を生み出してきた高橋。評判が評判を呼び、注文住宅の受注は現在、ほとんどが口コミによるものとなっています。

「お客様と関わるのが大好きなので、つい自分で全てやろうとするクセが出てしまう(笑)。お客様を喜ばせたい、心から納得してほしいというのは、私自身の欲深さかもしれません。でも、これからは培ってきたことを会社のブランディングに生かしていく時期だとも感じています。

土地や建材の高騰に加えて省エネ基準の義務化など、住宅業界はこれからさらに大きな変化があると思いますが、それでも『ケーナインが住む人にとって一番いい家を建てている』という状況でいたいですね」

20代、30代の若手も育てつつ、会社と一緒に成長していきたい、と力強く話してくれました。

Point!

高橋をはじめ、家づくりに全力で取り組んでいるケーナイン。「単に家をつくるだけではなく、暮らし方をつくる」という考えのもと、お客様とじっくり対話をしながら暮らしやすさをかたちにしていきます。ホームページには、今回ご紹介したもの以外にもお客様のストーリーをご紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。